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陶子のブログ

(前編)ある夫婦の限界〜30年の友人が初めて「無理だ」と言った日

30年近く付き合いのある男友達の話です。


彼は学生時代から人生の転機があるたびに、都度意見を求めてくる人でした。
ただそれは一般的な意味での「相談」とは全く違います。

彼はもともと、人に答えを聞こうとするタイプとは真逆です。

常に冷静に考え、何が起きても次の手を探し、目的のためにはどんな努力も厭わない。
海外を飛び周り、現地のトップを説得して膨大な予算をかけた壮大なプロジェクトを
本当に実現させてしまうような、圧倒的な実行力と底なしのチャレンジ精神を持つ人です。

同じ人間なのだろうかと感じたことも1度や2度ではありません🫨
あまりに私と真逆な人生を歩んでいるため、
彼の仕事の話は壮大すぎて理解が追いついたことはありません。

そんな彼が数十年もの間、欠かさず連絡をしてくるのは、
今の自分の立ち位置や思考の整理、自分の中での答え合わせを私に話すことで行うっているのだと
感じてきました。

全てにおいて真逆の私は、彼からしたら自分には一切ない考えを持つ想像を絶した特殊なサンプルとでも映っているのかもしれません😆

私が現在のカウンセリング業に従事するようになったのも、自信がないと迷う私に対しその友人が長年根気強く背中を押し続けてくれたからでもあり、彼のその類まれな諦めない特性のおかげで、今の私がいます(笑)


話の後、近況を聞いて「ひとまず大丈夫」と返ってくるたび、
心の中で「相当大変なことを抱えているな」と感じてはいましたが、
そのプロセスすら自分の経験として大事にする人なので、私も深くは踏み込まずに見守ってきました。



ところが先日。


そんな彼が30年にもなる付き合いの中で初めて、
「本当にどうしていいかわからない。もう無理だ」と言ってきたのです。


彼の口から「無理だ」という言葉を聞くのは、私の記憶にある限り初めてのことでした。
かなり驚いたと同時に、相当な事態が起きているのだと思いました。

話を聞いていくと、そこには長年の夫婦関係と、そこから派生した長きに渡る子育ての問題、
そして今まさに行き詰まった過酷な現実がありました。




今回の内容はそんな友人と奥様の出来事です。




話を聞き進めていくと、今まで彼が単発で話していた内容、
私に壁打ちすることでコントロールし整理しようと勤めていた内容、
過去の点と点が一気につながりました。


その上で彼が長年どうやって夫婦関係を維持してきたのかを尋ねると、

「最近はひたすら「無」」

「仏の境地に至るようあらゆる努力に日々励んでいた笑」とも。


静かな場所に足を運んだり、合気道に通い始めたり、瞑想を取り入れたりと
自分の精神の在り方を見つめ直していたと。


そして見た目重視で結婚した自分の全責任だと考えてきたこと。

付き合っている時におかしいと感じることはいくらでもあった。

それを毎度無邪気だとか破天荒だとか天然とか我儘で可愛いと自分の中で都合よく解釈し済ませていた。

だから彼女は結婚前から何も変わっていない。

今の全ての問題はその彼女の素の姿を見て見ぬふりして結婚した自分の全責任だと。

そうなると彼女に変われと求めるのは違うと思った。彼女からしたら理不尽にしか感じないだろうと。

でも子供がいる。

何を一番か考えて欲しくて投げかけようとするも、
その触りの話で彼女と自分の考えが違うと察知された時点で逆上されて難しい。

自分の気持ちを伝えようとしても、その時点で瞬時に逆上する。

「一緒に考えよう」と言うことすら困難。

意見が違うと怒りしか返ってこない。

建設的な会話ができたことがない。

だから、大事なことほど話さなくなった。

正確には、「話せない。」と。


そしてその影響が子供に今まで長年派生してきた。

子供をどうしたら守れるかと日々考えて行動してきた。

今回は彼女の反応もいつもとは桁外れ。こんなこと初めてだ。

本当に限界が来たと。


半分笑いながら情けないと自嘲気味に話してきましたが、
その思いにまでなる出来事を聞いたら何一つ笑える部分などありませんでした。





その友人には自分が長年過ごしたいと思ってきた唯一心休まる場所がありました。

事実上そこに暮らせなくても休みの日に自由に過ごせればいい。
将来そこでゆっくり自分の時間を過ごせれば。

その思いから気に入った物件を早々に購入しようとし手続きを進めていたことが今回の問題の発端でした。

妻には言えなかった。話そうとも思えなかった。

彼女からしたら何の価値も感じない場所だとわかりきっていたから。

話せば激昂され全否定され潰されてしまうのは話す前から目に見えて明らか。

家族には言わなければわからない、全く迷惑かけない範囲の買い物だった。

でもいずれ言わなけばならない時は必ずくる。

葛藤したけれど、今回の物件は2度と出てこないであろうと感じた彼にとって
どうしても条件的にも手に入れたいものだった。

手に入れないと必ず後悔する。

でもそれが郵送物でバレてしまった。

離婚届に今すぐ判を押せと迫られ続けるのが明け方まで続き

私の自尊心をあなたは根っこから潰し奪ったと言われる毎日・・



彼女からしたら「夫が大事なことを話してくれない」となり、

いますぐ離婚だと激昂し、私はあなたの妻なのか、一体何なのかと叫ぶ日々。

彼からしたら、あなたは俺の妻なんですか?俺は一体なんなんですかという日々を長年堪えてきたと。

この長年の思いがあなたにわかりますか、わからないですよね、わかっていたらこうなってないと
言いたかったけど意味もなさない言葉だともわかりきっている、
何も話せない。

だから今回離婚に応じようと思った。

そして自分も本心では心の底から離婚を願ってきたことに気づいてしまったと。

心底離婚を迫られホッとしている自分がいたと。

その思いに蓋をしてきた自分も知ってしまった。

でも現実子供がいる。

下の子はまだまだ大人になるまで時間がかかるし、彼女のもとで育ったら子供は壊れてしまう。

今までも子供が妻には言えないことを子供と共有してきた。

子供達は妻の顔色を常に見て隠し事をたくさん抱えながらも
離れたいとは思っていないのも分かっているとも。

自分が砦になっている。

妻は何も子供たちの思いは知らず自分は愛されていて最高の母親だと自らを信じている。

離婚となって子供たちを自分が引き取るとなると、新聞沙汰になることまでリアルに想像できてしまう。

もう何から考えていいのか限界を迎えたと。


そう話してくれました。


そして友人は、奥さんがなぜそこまで怒るのかも、ずっと考えてきたと。

育った環境なのか。何か過去に原因があるのか。兄弟両親にもアンテナを立てまくってきた。

彼女の幼少期から自分と出会うまでの人生をそれとなく色々な角度から何度も聞いてみた。

本人が抱えている不安なのか。何か別の問題があるのか。

考えられることは、とにかく全て考えた。

昔からチヤホヤされてはきたと感じるけれど、ここまでになるかと考えると答えが出ない。

どうすれば子どもたちを守れるのか。

どうすれば家庭を少しでも良くできるのか。彼なりに長年考え続けてきたと。



彼女ももしかしたら何かしらの理由があり、ずっと強い不安の中に居続けているのかもしれません。

怒りの裏側には、いつも強い悲しみがあるかもしれません。

私は奥様と個人的な繋がりはありません。

気性が激しく夫婦仲が良いとは言えないとは聞き、

彼からの度重なる壁打ちのような相談内容に何かしら結構な問題は抱えているのも気づいてはいた。

今回初めて詳細にわたる実態を知りました。



私は以前から、子どもたちについても時々相談されていました。

「今、この子は何を考えていると思う?」「どう接したらいいと思う?」

そんな話を何度も彼はしてきました。


そこで私は、「何を言っても考えを否定されない」「話しても怒られない」

まずそう思える安心感を作ってあげることが大事なんじゃないか。

そこを基本として話をしてきました。



そして彼はそれを本気でやってきたと。

思春期も重なり口を閉ざしていた子どもたちとも、試行錯誤しながら関係を築いていったそうです。

その話を聞いて、私は今までの出来事の意味が全部わかった気がしました。

なぜいくらでも話せるスキルの高いはずの彼が、子ども本人と話し合うのではなく
私に確認するように聞いてきたのか。

なぜ家庭の大事なことが、夫婦の間で共有されなくなっていたのか。

なぜ子どもたちも、親に本音を話さなくなっていたのか。


話したら何が起こるかわからない。話したら否定される。

話したことで新たな争いが起きるかもしれない。

子ども達からしたら親が大切にしているのは
自分達が何を感じ、何を大切にしているかではなく親自身の感情だ。

そんな思いをする環境が当たり前の日常だったら、最初から話そうとも思わない。

だから口を閉ざす。

子どもたちの気持ちも沁み入りました。





私がこれまでのご相談において感じてきたのは、

「感情を誰かに話して落ち着く」という方法より、
「自分の中で原因を整理して、どうすればいいかを考え、結論を出す」
という方法で心を保っている男性が多くいらっしゃる、ということです。

そして、その背景には社会の中での立ち位置も関係していると思うこともあります。

仕事でも、家庭でも、
「頼られる側でいなければならない」「弱さを見せたくない」
「失敗した人間だと思われたくない」「自分の価値を結果で証明しなければならない」

そんな空気の中で長く生きていると、

「本当は苦しい」「どうしていいかわからない」という言葉を誰かに渡すこと自体も考えつかない。

本当にどうにもならなくなった時でさえ、
「話しても仕方がない」「相手に話したところで解決するわけではない」

そもそも話し方も打ち明け方が分からない。話すとしたら何をどこからどう話せばいいんだろう、
そう考えるだけで途方に暮れてしまう男性もいらっしゃいます。

男性が悩みを話さない理由の一つには、
「話すこと」と「問題が解決すること」が直結していない
という感覚もあると感じることは多々です。

今回の友人も、まさにそうでした。

彼は、感情を吐き出すことで楽になるというより、考えて、分析して、原因を探して、対策を作る。

そうやって人生を切り開いてきたからこそ、
「努力すれば、考えれば、何か打開策はある」という思考が強い。

ところが今回の内容だけは、何を考えても答えが出ない。問題は自分一人の人生ではない。

何をどうすればいいのか。どこから手をつければいいのか。

そして、これまで自分なりに必死にやってきたやり方が、
全く通用しない、意味がなかったと。
心が折れるとはこういうことかと話していました。



そして、ここからの展開が衝撃的でした。


長年ほとんど成立しなかった夫婦に、変化が起き始めたのです。

今回は離婚をめぐって激しい衝突が起きていた中で、私は友人に、
今すぐ結論を出すことだけを優先しない方がいいと伝えました。


彼は彼女の望む通り、今すぐでも判を押さなければ収まりそうにない、
今までで一番の事態になっていると言いました。

でも離婚は夫婦二人だけの問題ではない。
子どもたちの生活も、これからの人生も関係するし、その後の彼等の生活の計画も全くされていない。


計画的に物事を進めることを重点として生きてきた彼が
今すぐ応じなければと切羽詰まるまで追い詰められている。

子ども達はそもそも親が離婚するのも全く知らされていない状況です。

判子一つで成立し、書類上完全に他人になることなんていつでもできる、
でも今はどうにか堪えて彼女が少しでも冷静になれる余地を作ってみよう、
今の時点で心血注ぐのはそこだと。



彼も納得しそれを実行しました。


すると、今まで怒鳴り叫んでいた奥様は、今度は完全に彼の存在自体を無視するようになったのです。
家事もしなくなり、部屋に閉じこもってしまいました。

彼から連日「今こんなんなんだけど、これほっといていいの?」と連絡がきます。
展開が予想できず手も足も出ない、奥様が無視に走ること自体が初めてだと。


それでもこちらからは何も仕掛けず、様子を見てと伝えました。

感情的だからこそ、
大事な子ども達のことを話し合う際は本人の一呼吸がどうしても必要に感じたからです。

彼も話し合いながら納得し、静かに待ちました。




そして彼女の引きこもりから三日後。

これまで長年動かなかった夫婦の関係に、信じられないような展開が待っていました。